夏日




土曜日の朝のビジネス街にいた。人間が少なくて快適だ。しかし、にわかに陽射しが強さを増してきて、昨年の夏の暑さを思い出した。診察を終えて外に出て、なお昼まで二時間もあるとゆうのに、陽はすでに昼のものになってる。それでも人間の少ないビジネス街を歩くのが無性に愉快で、歩くのをやめられなかった。
川沿いを歩くと黒猫が木陰で寝そべったまま黄緑色に眼を光らせてた。昔よく鯰が捕れたらしい川を数名の客を乗せた舟がゆくのも見た。しかし、暑い。じりじり焼ける。
川沿いがいつの間にかやけに綺麗になっている。確か、わたしが幼少の頃は道端や橋の下は昼間でも一人で歩くのは憚るような雰囲気があった。いつからこんなに不気味に綺麗になったのやったっけ。この不気味な綺麗さのために行き場を、生きる場所を追われた人間はどれだけいたんやろう。
大阪の玄関ともゆう駅や外国からの観光客も賑わうマチには消費を促すだけのものがますます乱立してゆく。大阪にあんなものがあんなにも必要なんやろか。本当に必要なものはないがしろにされている。
前の晩少し夜更かししたせいなんか、この急激な暑さのせいなんか目眩がしてきた。隠れ家のような喫茶店が昼12時に開店するのを向かいの公園で鳩と一緒に待っていた。時折吹いてくる風に慰められながら、暑いのはまだまだこれからだって、昨年とは全く違う夏がもう目の前に近づいてるってこと、ぼんやり感じてクラクラしていた。