団十郎の筒白

 
 
 
失業してひとつきも経つと、すっかり田舎暮らしが合うてきた。胃カメラ検査やらで週一くらい大阪にゆくと妙な違和感を覚えるほどまでに。奈良はのんびりしとんのね。田んぼやらお寺の森やらが夏の空いちめんに描き出されたもくもく雲とよう似合うてる。それに向かってずんずんと歩いてると、暑くてボーッとした頭が嬉しくなってますますボーッとなる。
夏はまだ此処にも残っててくれたんやね。朝も夕方も息が止まるくらい暑いけど、蜩の鳴く声に涼を感じたり。本日8強決まる。これと同じ時間はもう二度やってこないてわかってるから、白球はおもわぬところへ飛んでしまう。液晶の画面から、そんな君の緊張の絶頂がグサグサと射すように響いてくる。やめられない…目が離せない…甲子園。
相も変わらず意地汚く複数本を平行読みする失業の夏に。憂鬱でもなんでも仕事があるひとが本気で妬ましい。バラバラに砕かれて解体されてゆく夏。