朝の地下鉄にて

miwakiti2006-10-03






9月は残暑だからと言い分けをして裸足とサンダルで過ごして来た。
10月はもうそんな言い分けも通用しないだろうと諦めて
くるぶしまでの靴下とスニーカーに履き変えた。
裸足なら足首が見えていても様になっていたが
靴下を履くと情けなく見えた。
地下鉄の席に座って、折り上げていた裾を全部おろしてみた。
今朝Gパンを履こうした時、何かが落ちたような音がしたが
急いでいたので気付かない振りをした。
おろした裾から、乾いた草と乾いた土が一握り、
いや、一つまみずつ両方から出て来た。
不気味だった。
いつからこのGパンにあったものなのか、
なぜ今まで気付かなかったのか。
そして、心当たりがなくどこで入ったものなのかちっとも思い出せない。
携帯のスケジュールを過去に遡らせていると思いあたったのは、
あのひたちなかくらいだ。
一体どれだけ時間が経っているというのだろう。
夏の記憶のすべてが地下鉄の車両の床の
私の足元に散らばっていた。
私は他人の想い出を読むみたいにしばらく黙って見ていた。
耳に次々と流れ込んでくる音楽に心が奪われて、
足元の草と土のことはもう忘れて地下鉄を降りた。
おろしすぎたズボンの裾をスニーカーの踵で踏みながら前に進み、
改札をくぐっていった。