あゝ、荒野


2021年、未来の新宿。305分の映画。原作は、寺山修司の長編小説『あゝ、荒野』。一日は、二十四時間で、一年は三百六十五日なのに、たった305分の物語りにどっぷりはまって浦島太郎になったような気分を久しぶりに味わっている。すべての登場人物たちの存在に意味が溢れすぎるほどあって、くんずほぐれず絡まりあいストーリーがきれいな編み目を紡ぎ、全くのフィクションがドキュメンタリーのように撮られて、どんなに悲惨で穢れ醜くあろうともすべての人物たちが美しすぎる。すべて、愚かだ。そして、なによりも新宿。歌舞伎町、の風景が一番泣けた。新次とバリカンが走り抜ける新宿の風景が一番泣けた。