長い散歩





「長い散歩」公式サイト


ABCホールにて試写会。朝日放送に行くのはじめてだ。
職場から川沿いをテクテク、およそ20分くらいだった。
これからは福島へらくらく歩いてゆけるわ〜。
途中で朝日放送新社屋の工事現場のぞきながら
(あまりにも巨大。近未来都市でもつくるつもりかと思う)
おでんの「花くじら」やイタリアンの「ポルチーニ」、
ライブハウス「福島セカンドライン」を通り過ぎたよ。
ABCホールで行う試写会は、ペア招待が少ないらしい。
おひとりさまが多いから大丈夫かな〜と思いきや、
開演5分くらいは、さすがにほぼ満席状態で、
前方端しか席が空いてなく、結局、前から2列目に座った。
舞台が低くて、舞台の奥が広〜い。
レトロな造りが落ち着くのか、落ち着かないのか。
前に座ってよかったなーと思ったのは、
上映後に奥田暎二監督とスペシャルゲストの高岡早紀
まぁまぁ間近で見れたこと。
奥田暎二って、団塊の世代なの?
見えないわぁ。その精神的な部分は結構頷けるけど。
見た目ね。若い。
高岡早紀も、やっぱりきれいで2児の母には見えぬ。
まるでお嬢さん。さすが女優だ。


奥田暎二は某コーヒー会社のCMで共演したときに、
「緒方拳という俳優」にインスパイアされて、
この映画を製作するに至ったという。
大俳優を演出するのは、やはり大変だったようだ。
細かい演技のリクエストをすると、緒方拳は、
「それは腑に落ちない」と言ったそうだ。
そこで奥田監督は、
「このシーンは、それでいいのです。
腑に落ちなければ、腑に落ちないまま演じてください」
と言うと、緒方拳は、
「わかった。腑に落ちた」と言い、演技をしたそうだ。
奥田監督は更に緒方拳に緒方拳らしい演技を求めなかったそうだ。
すこしでも、いわゆる緒方拳らしさが出ると、
「らしさを出すと、どうやっても、幸ちゃん(子役)に負けますよ。
だから、緒方さん、あなたは何もしないで下さい」と。


すでに二作品を世に出している奥田監督の映画、
わたしはこれが初めての鑑賞だったけど、
彼は相当に美意識に厳しい人だと思った。
映画の舞台は、彼の故郷、愛知県と岐阜県の山奥に渡って撮影。
河原の土手、ボロアパート、渡り歩く安宿、廃校で焚火。
無人駅の待ち合い、狭い路地裏、長屋、山奥を走るバス。
どんどんと忘れ去られていく日本の原風景。
切り取られた写真集のような映画。
結婚生活の破たん、アルコール中毒、幼児虐待、
ひきこもり、名もない若者の自殺。
誘拐と投獄。
こんな言葉からは想像もできない美しい映画でした。
そうして、この美しく平和な風景からは想像もできない
追いつめられた現実がある。
この世にユートピアなどないと思うよ。
そんなのはまったくの幻想だ。
わたしたちは愛し方を知らないのじゃない。
愛され方を知らないだけなのかも。


厳しい現実をつきつけながらも、なぜ、どうして、
こんな悲しい現実があるのか、その理由をはっきりとは語らない。
強いということは、弱さなのかもしれない。
弱さをしることで、ようやくやさしさを取り戻すことができるのかもしれない。
ところで、私も腑に落ちないところがあったのですよ、監督。
クレジットに出てくる「文化庁」って文字が大きすぎやしないですか?