やさしいうた

やさしいうた
作/渡辺健二




わけもなくふざけあった夜も忘れて
そんな日が永遠にも続く気がした
引き出しにしまった写真は笑顔のままさ
嘘みたいに今を信じられた頃


いつの日も流れていたあのメロディーを何度となく
口ずさんでた君の横顔 やさしい瞳
あらゆるものが色づき始めていく頃
何も無くてもあのメロディーと
ほんの少しのぬくもりに包まれて


知らぬ間に薄れていく気持ちを抱いて
あまりにも知りすぎてく何も見えない
どこまで歩いても変らず届かないままさ
立ち止まる歩道でふいにこみ上げてくる


いつの日か流れていたあのメロディーを憶えている
寄り添うように語り掛けてる
ひとりじゃないと励ましてる
あれから少し季節が過ぎたことを知る
手に入れたものと引き換えに
失くした大事なもの


今もまだ聞こえているあのメロディーを口ずさんで
色褪せた写真の笑顔は今日も変わらない変わらない
過ぎていく時の中で薄れていく虹の色を
溶かしたようなあのメロディーを
心の中にいつまでも忘れない